中古リノベーションの人気に伴い、
旧耐震のマンションを検討される方も増えてきました。
旧耐震のマンションは、耐震性だけではなく、
利用できる税制上の優遇制度や建物の劣化についても注意が必要です。
この記事では、耐震制度の解説から、旧耐震を選ぶ際の注意点をご説明します。
【目次】
1.旧耐震・新耐震の違いとは
2.「あえての旧耐震」という選択はアリなのか
①最優先したい条件によって正解は異なる
3.旧耐震を選ぶ際の3つの注意点
4.住宅ローン控除などの税制上の優遇制度を利用できない
①建物が劣化しているリスクがある
5.修繕積立金が高額の場合がある
まとめ
少しでもマイホームの購入資金を抑えたい、
または中古マンションを購入してリノベーションをしてみたい、
という方は増えているようです。
しかし、「安いし立地も良いけど、旧耐震って大丈夫なの?」
と、不安になる方は多いことでしょう。
地震が多い日本ですから、耐震性が気になるのも当然です。
でも、そもそも耐震性って何なのでしょう。
旧耐震と新耐震でどのような違いがあるのでしょうか。
今回の記事は、耐震制度の解説から、旧耐震を選ぶ際の注意点をご説明します。
1.旧耐震・新耐震の違いとは
中古マンションの耐震基準は「旧耐震基準」と「新耐震基準」に分類されています。
旧耐震は、1981年(昭和56)年5月31日まで適用されていた構造の基準で、
「震度5程度の地震でも倒壊しない」ことを設定していました。
しかし、1978年に起きた宮城県沖地震で倒壊の被害が大きかったことにより、
1981年6月に新耐震の基準が誕生しました。
新耐震は、「震度6~7程度の大きな地震でも倒壊しない」ことが設定されています。
1981年6月以降の新耐震基準は以下のとおりです。
震度5程度の地震:大きく損傷しない震度6~7程度の地震:建物が倒壊しない |
ちなみに、旧耐震と新耐震を見分ける基準は、
新耐震の基準が誕生した1981年6月1日という日付が区切りになりますが、
これは竣工日(建物が完成した日)ではなく建築確認日を確認する必要があります。
着工から竣工まで半年以上かかる物件も多いので、竣工日だけチェックすると
新耐震のように見えるのに、建築確認日を調べてみたら旧耐震だった…という
ケースも少なくありません。
建築確認日を確認する際は、買主が所有している「建築確認通知書」を
確認させてもらいましょう。
仲介している不動産会社にお願いすれば対応してくれるはずです。
2.「あえての旧耐震」という選択はアリなのか
この記事を読んでいる方は、
おそらく旧耐震の物件を検討されているのかもしれませんね。
気に入った物件が旧耐震だった場合、
購入しても大丈夫なのか気になるところです。
あえての旧耐震という選択は、果たしてアリなのでしょうか。
①最優先したい条件によって正解は異なる
誰にでも住宅予算というものがあります。
限られた予算内で何を優先させるのかによって物件の選択肢は異なります。
築年数・耐震性・家の広さ・間取り・駅からの距離など、何を優先して、
どこに予算をかけるかは人によって異なります。
住宅予算内に収まる範囲で希望の物件を購入できるのなら、
もちろん何の問題もありません。
ただ、みなさん何かしらの条件を諦めてマイホームを購入されています。
マイホーム購入費用をできるだけ抑えたい、
または住宅予算が少ない場合は、
旧耐震の物件も選択肢のひとつに含まれてくるかと思います。
耐震性以外は、すべて希望条件を満たしている場合、とても悩みますよね。
ここで、「ほかの条件は諦めてでも、新耐震の物件を購入したい」とお考えになるのも、
「耐震性よりも立地や家の広さを優先したい」とお考えになるのも、間違いではないのです。
ただ、旧耐震の物件を選ぶ場合は、
注意点についてもしっかり理解しておく必要があります。
次項で詳しく解説します。
3.旧耐震を選ぶ際の3つの注意点
旧耐震の物件でも耐震性の強い構造の物件は存在しますが、
安易に安い旧耐震の物件に飛びつくことはおすすめしません。
どのような点に注意が必要なのかみていきましょう。
4.住宅ローン控除などの税制上の優遇制度を利用できない
マイホーム購入すると利用できる、税制上の優遇制度がいくつかあります。
旧耐震の物件は、優遇制度が利用できないケースが多いので注意が必要です。
- 住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、10年間にわたり年末の住宅ローン残高の1%が
所得税や住民税から控除されるという制度です。
基本的に、旧耐震の物件には住宅ローン控除は使えません。
住宅ローン控除を受けるためには、
マンションの場合、築25年以内が適用条件になります。
ただし、築25年を超えていても以下のいずれかに該当していれば、
住宅ローン控除を利用することが可能です。
・既存住宅売買かし保険の付保・耐震基準適合証明書の取得 |
ただし、1981年5月以前に建築確認が申請された旧耐震基準の物件の場合、
耐震適合証明を取得できないケースがほとんどです。
- 贈与の非課税制度が使えない
通常、両親などから贈与を受けると「贈与税」が課税されます。
しかし、住宅購入資金に対する資金援助の場合は贈与税が非課税になる制度があります。
この税制度を利用するための条件は、住宅ローン控除の適用条件と同じく、
築25年以内、もしくは耐震適合証明が取れる物件であることが条件となります。
そのため、旧耐震の物件(耐震適合証明書が取得できない)は利用することができません。
- 不動産取得税・登録免許税の優遇が使えない
不動産取得税・登録免許税の優遇を受けるためには、
住宅ローン控除の適用条件と同じく、物件が築25年以内である必要があります。
また、築25年以内、もしくは耐震適合証明が取れる物件である点も住宅ローン控除と同様です。
①建物が劣化しているリスクがある
マンションの管理状態にもよりますが、マンションのコンクリートは経年劣化によって
強度が保てなくなります。
コンクリートは、マンションの寿命を左右するといわれるぐらい重要な部分です。
きちんと管理されているマンションであれば、
定期的に塗装や補修工事などを行っています。
物件見学の際は、部屋の中だけではなく、
コンクリートや外壁のタイルなどもチェックしましょう。
ただ、細かいチェックは一般の方では難しいので、
インスペクションを依頼することをおすすめします。
5.修繕積立金が高額の場合がある
一般的に、マンションは毎月修繕積立金の支払いがあります。
「段階増額積立方式」という方法で支払うケースが多く、
築年数が経過するごとに修繕積立金が値上げされる仕組みになっています。
修繕計画がいい加減なマンションの場合、修繕積立金が不足し、
値上げをせざるを得ない状況になることがあります。
値上げを繰り返した末、修繕積立金だけで月に5万以上請求させるケースもあります。
物件を選ぶ際は、修繕積立金のことや修繕計画についても確認しておきましょう。
まとめ
旧耐震でも、耐震強度の高い優良物件は存在します。
新耐震は地震による耐性は認められていますが、
エントランスが吹き抜けになっている場合など、
構造によって耐震性は異なります。
旧耐震であっても、新耐震なみに強度の高い物件もあるのです。
最初から「旧耐震はダメ!」と候補から外すのではなく、
管理状態や注意点をしっかり理解した上で
物件を選ぶことをおすすめします。